【名作昔話を掘り下げる7】『かしこすぎた大臣』

名作昔話を掘り下げる、第7回目は、

インドの昔話

『かしこすぎた大臣』

をお送りします。

 

こちらも前回と同じく、

昔話ですが、”再話者”の名前がハッキリとしている話です。

再話者がどのような趣意で、話を整えたのか、

そのへんにも思いを巡らしながら、

深掘りしていきましょう。

Hirayama
このストーリー分析は、

物語創作に興味のある人や、

今、心のモヤモヤを抱えている人に、大きな示唆を与えるものとなっています。

それではスタート!

Sponsored Link

今回ご紹介する話は…

↑この中に収録されています。



↑私による朗読です。(記事をお読みいただいた後に聴くほうがいいかも知れません。)

このストーリーのモチーフ(発想の原点)

再話者

どんな時代にも、有力者にコバンザメのようにまとわりついて、

おいしい汁を吸い続ける人間っているよね。

そんな人間は大抵、

表面的には、

「あなたを尊敬しています」「あなたについていきます」とか言いながら、

裏ではその人を馬鹿にしてたりするんだよ。
”モチーフ”とは、もともと音楽用語で「最小旋律」を意味します。物語創作に置き換えると「こんな物語を作りたいなぁ」という”イメージ像”あるいは”きっかけ”のようなものです。
物語が生まれる一番最初の材料(モチーフ)って、

「世の中って、こうじゃない?」

という想いや、ひらめきのことです。

 

でもそうしたひらめきは、

物語にしないと、人が見てくれません。感じ取ってくれません。

こういったもの(モチーフ)に、

少〜しずつ肉付けをしていくことで、物語というものは作られていくんですね。

 

…そうすることによってモチーフは、ありのままのメッセージを隠し、

”テーマ”として、

物語の中で息づいてきます。

物語の『天・地・人』

では、基本設定を抑えていきましょう。

天(時代・世界設定)

インドの昔(あくまでも「昔話」なのでファンタジー要素は強い)

地(物語のスタート地点)

ある王様の城

人(主人公および登場人物)

王様と側近の大臣
物語を設計していく時にまず決めなくてはいけないのが、この3要素です。「天」に関していうと、昔話の場合は「昔話というジャンル」ですから、出だしの「むかしむかし〜」だけで感じ取ってもらえるという利便性があります。

あらすじ(物語のおおまかな設計図)

主人公の大臣は、いつも王様のそばで、

「自分がどれだけ頭がいいか」を、王様に対し印象付けていた。

王様はこれを真に受け、

実際、「こんな大臣が仕えてくれている自分は何て幸せなんだ」と思っていた。

でもこの大臣は王様に親切にするふりをして、

実はやりたい放題だった。

を教えて、自分の嫌いな人に罪を被せたり、

王様のお金をネコババしたり…。

ある時、自分が罪を被せた人から、命乞いをされた大臣は、

こんな嘘をつく。

「王様、今日は特別な日です。今夜こやつを殺したら、こやつは天国に行ってしまいます。

罪人を天国に行かせてどうするのです?」

と。

王様はかねてから天国に行きたいと思っていた。

「大臣、一緒に天国へ行くぞ。まずはお前から行け」

…大臣は、殺されてしまいました。
あらすじとは「どんな状況にあった誰が、何をして、最後どうなったか?」です。創作する場合には「モチーフ」+「天・地・人」の要素に加え、主人公の「移動」の様子をイメージするとまとめやすいでしょう。

Sponsored Link



起承転結は?

王様大臣登場。

王様と大臣の関係性を説明。

王様は、大臣に絶大な信頼を置いている。

大臣はそれに対し、

「どこへでもあなたについて行きます」と忠誠を誓う。

でも、この大臣はしたたかなやつ。これらはぜんぶ彼の作戦(嘘)。

承①

ある時、道でキツネが鳴く。

王様:「あれはなぜじゃ?」

大臣:「キツネは寒がっているのです。キツネの毛布を奪ったものがおります」

王様:「その者を殺せ。そしてこのお金でキツネに毛布を買ってやれ」

大臣、自分の嫌いな人物を葬り、お金も着服…。

承②

キツネはまだ鳴いている。

大臣:「あれは王様に対して感謝しているのです」

そこへイノシシが現れる。

王様:「これは何じゃ?」

大臣:「これは痩せこけた”ゾウ”です。飼育係がさぼっているのです」

王様:「その者を殺せ。このお金で餌を与えよ」

大臣、またも、自分の嫌いな人物を葬り、お金も着服…。

承③

道へまたイノシシが現れる。

大臣:「これは城の食料を食い荒らしたネズミです」

王様:「では料理番を殺せ」

料理番:「大臣、お金をやるから、何とか私を助けてくれ」

大臣:「私に任せておれ…」

大臣:「王様、待ってください。

今夜、首をくくられた人間は天国へ行ってしまいます。

こんな悪党を天国に送ってはなりません!」

王様:「わしはかねてから天国へ行きたかった。

お前はずっとわしのお供をする言っておったな?

わしは天国へ行きたい。

そちに道案内を頼む。では、先に死ねぃ」

大臣は自分の策におぼれ、命を失うことに…。

王様自身も、天国に行こうとして死んでしまう…。
一般的な「起承転結」は、さらに細かく分けると「起」→「承①」→「承②」→「承③」→「転」→「結」となります。これは昔話以外のどんな長い物語にも当てはまります。主人公の「アクション(行動)」および「それによって動いた事実」に焦点を絞って振り分けます。

このストーリーのポイントは?

前回も触れましたが、

昔話には、よく”3の要素”が使われます。

この物語にも、実にうまく3の要素が使われています。

それも、鎖のようにしっかり繋がれた「3」です。

 

 

まず、承①で、キツネの毛布を買うためのお金を着服し、

大臣の本性はいきなり全開します。

 

そして、承②の冒頭で、それがバレそうになるも…

しかし、それをうまく乗り切り…

またも着服…。

 

 

承③の冒頭、またも承②で着服したお金のことがバレそうになるも…

大臣は、これまでとまったく同じ流れで、うまく乗り切る。

しかし、今度はここで新展開。

罪を被せられた料理番が、大臣に取引を持ちかけてきます。

「あなたにお金もやります、さらに、王様と同じ料理を食べさせてあげます」と。

 

…そして、で、

大臣が自分の身を滅ぼす嘘をついてしまうのですが…。

 

この物語の承①〜③のポイントをしっかり抑えておくと、

つまりは、こういうことです。

 

最初から、「あやしいやつ」として描かれていた大臣が、

しっかり、悪さを働く承①(予想通り)
⬇︎

「大臣の嘘がバレるのか?」と思ったら…

なんと、バレない承②(驚き)
⬇︎

「大臣の嘘がついにバレるのか?」と思ったら…

なんと、やっぱりバレない承③(なーんだと思うと同時に、大臣が懲らしめられることを願う読者…)


コレ、実によくできています。

読者(聞き手)の気持ちをず〜っと、鷲掴みのまんま、

最後まで持っていってます。

 

予想させ、

その予想を裏切り

でも、最後には、

読者がちゃんと望む通りの結末を迎えます。

(王様が実は賢くて、わざと騙されていた…というの展開はなく、最後、本当に死んでしまうのは、ある意味、衝撃ですが、何とも言えない読後感が、逆に気持ちいです…。)

Sponsored Link



このストーリーの伝えるメッセージは?

 

この物語は、

とにかく”筋”が、ものすご〜く緻密にできていますが、

あまり

”メッセージ性”はないように思います。

 

いくら何でも、

「そんな嘘つき大臣を信じてしまう王様も同罪だ。同じ目に遭っちゃえ!」

なんていうメッセージはありません。

 

しかし、これが、

(再話者がいるとしても)純粋な創作物ではなく、

古来から人々の口から口へ伝承してきた話だということ、

それそのものに希望を感じます。

 

「人の気持ちを引くテクニック」がこんなにも洗練された形で、

ず〜っと受け継がれてきたんですね。

 

それぞれ大きな悩みや小さな悩みを抱えながら、

また、人間関係に苦しみながら、日々生きている人間ですけど、

 

世代や時空を超えた、大いなる知性からすると、

たぶん、かわいいもんなんですよ。

代々受け継がれてきた昔話に、

こんなにも見事に、感情を手玉に取られちゃうくらいですから…。

 

…そんなふうなことを思ったりします。

Hirayama

…というわけで、

名作昔話を掘り下げる、第7回目『かしこすぎた大臣』でした。

何らかのお役に立てば幸いです。


【名作昔話を掘り下げる6】『三人兄弟』

2017.10.28

【名作昔話を掘り下げる8】『くぎスープ』

2017.10.31

Sponsored Link



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です