【名作昔話を掘り下げる11】『ちびのこひつじ』

名作昔話を掘り下げる、第11回目は、

インドの昔話

『ちびのこひつじ』

をお送りします。

 

昔話は、ご存知のように、

ハッピーエンドの話ばかりでなく、

バッドエンドの話もたくさんあります。

(前回ご紹介した『小さなおうち』も、一応そうですね。)

 

今回のこれも、バッドエンドです。

しかも、爽快なバッドエンドではなく、

非常にネガティブなバッドエンド…。

 

そういった意味では少々珍しい昔話なのですが、

さっそく、

深掘りしていきましょう。

Hirayama
このストーリー分析は、

物語創作に興味のある人や、

今、心のモヤモヤを抱えている人に、大きな示唆を与えるものとなっています。

それではスタート!

Sponsored Link

今回ご紹介する話は…

↑この中に収録されています。



↑私による朗読です。(記事をお読みいただいた後に聴くほうがいいかも知れません。)

このストーリーのモチーフ(発想の原点)

世の中には危険な場面がたくさんある。

凶暴なやつらがたくさんいるからだ。

そんなやつらから身を守るためには、どうすればいいのか?

力が弱いなら、知恵を使えばいい。

でも、やっぱり、力には叶わない…。

力を持つ者にも、知恵はあるからだ。
”モチーフ”とは、もともと音楽用語で「最小旋律」を意味します。物語創作に置き換えると「こんな物語を作りたいなぁ」という”イメージ像”あるいは”きっかけ”のようなものです。
このモチーフからして、

もうネガティブですね…。

おそらくこんなモチーフをもとに、このようなお話が生まれ、

インドの地で長く伝承され、受け継がれてきたのでしょうが、

 

このお話にどんなメッセージが込められているのか?

ストーリーの骨組みを分析しながら考えていきましょう。

物語の『天・地・人』

続いて、基本設定です。

天(時代・世界設定)

インドの昔(当然「昔話」なので、ファンタジー要素が強い世界観です。)

地(物語のスタート地点)

あるところ

人(主人公および登場人物)

こひつじ、おばあさん(人間)、ジャッカル、はげたか、トラ、おおかみ、いぬ、わし

あらすじ(物語のおおまかな設計図)

こひつじが、おばあさんのところへ、すてきなものをもらうつもりで、出かけました。

途中、ジャッカルに会い、

ハゲタカに会い、

さらには、

トラ、おおかみ、いぬ、わしに会い、

そのたんびに、こひつじは食べられそうになります。

しかし、こひつじは、

「おばあさんのうちでこれからまるまる太ってくるから、

そのあと食べたほうがいいよ」

と言って、何とかすべての危機を乗り越えます。

おばあさんのうちで、えさをたくさん食べ、

まるまると太ったこひつじは、

おばあさんに『小太鼓』を作ってもらい、

その小太鼓に入って、うちへ帰ろうとします。

途中までは、行きと同じように、

つぎつぎと危機を乗り越えていくのですが、

最後に出会ったジャッカル(「行きでは一番最初に出会ったジャッカル」)に、

結局、食べられてしまいました…。

Sponsored Link



起承転結は?

こひつじ、おばあさんのうちへ出発。

承①

ジャッカルに出会う。

「太ってから食べたほうがいいよ」…危機を乗り切る。

承②

はげたかに出会う。

「太ってから食べたほうがいいよ」…危機を乗り切る。

承③

トラ、おおかみ、いぬ、わしに出会う。

「太ってから食べたほうがいいよ」…危機を乗り切る。

承④

おばあさんのうちへ着く。

食べ物をたくさん食べ、太る

小太鼓を作ってもらい、それに入って(乗って)家路へつく。

承⑤

わしと再会。

「こひつじはいなくなった。おまえさんは踊るがいい」…危機を乗り切る。

承⑥

行きに出会ったあらゆるけものと再会。

「こひつじはいなくなった。おまえさんは踊るがいい」…危機を乗り切る。

転(承⑦)

最後にジャッカルと再会。

「こひつじはいなくなった。おまえさんは…」

その先が歌えない…。怒鳴っておどすジャッカル。

ジャッカルは子羊の声を覚えていた!

こひつじはジャッカルに食べられてしまう…。
一般的な「起承転結」は、さらに細かく分けると「起」→「承①」→「承②」→「承③」→「転」→「結」となります。これは昔話以外のどんな長い物語にも当てはまります。主人公の「アクション(行動)」および「それによって動いた事実」に焦点を絞って振り分けます。

通常、「承」を3つに分けていますが、

今回はその倍、6つに分けてみました。

 

ただ、今回は変則。

「転」は、「転」であると同時に、

「承⑦」という捉え方をしてみます。

 

「承」①〜③は、通常のシンプルな昔話と同じ流れ。

(テンポよく、主人公が空間移動をしていきます。)

 

「承」④で折り返し

 

そのあと、

⑤〜⑥、⑦で、来た道を逆にたどっていきます。

 

こうして見ると、

やはり、昔話のリズム「3」は崩れていませんね。

 

このストーリーのポイントは?

おばあさんの元へ出かけ、

最初に出会うのが、ジャッカル

次がハゲタカ

その次は、ケモノ一同(わし含む)

 

帰りは、

最初出会うのが、わし

その次が、ケモノ一同

最後がジャッカル

 

他の昔話だと、

ジャッカル→はげたか→ケモノ一同

ケモノ一同→はげたか→ジャッカル

といったように、きれいに逆にたどりそうですが、

 

このお話では、そうはいきません。

 

そうはいかないところで…、

”何かが起きそう”な予感を漂わせますね。

 

そのあたり、絶妙な”演出”が効いています。

 

Sponsored Link



このストーリーの伝えるメッセージは?

このお話の中には、

いくつか非常に気になる点があります。

 

その一つは、冒頭のこひつじの紹介文。

 

「とても陽気な小さい羊がいて、

いつも何かしら面白いものを見つけては、

小さい足で跳ね回り、浮かれ回っていました」

 

とあります。

 

何か、あまり「好感」を持たせる表現ではないですね…。

 

それと、

小太鼓を作ってもらうシーンですが、

 

「僕の死んだお兄さんの皮で、小太鼓を一つ作ってください」

 

とあります。

 

ものすごく”微妙”な表現ですね。

このお兄さんのご加護があるのか、

それとも、お兄さんの呪いがかかっているのか…。

 

こういった微妙な表現といい、

帰りに出会うケモノたちの順番が、変則的であるところとか、

 

何か、

おきまりの昔話のパターンに

「わざと」逆らっているような感じすらします。

 

そこへきて、このバッドエンドです…。

 

このストーリーのメッセージを読み解くのは、非常に難しいですが、

私はこう考えます。

つまり、このお話が伝えたいのは、

「人生とは非情なものだ」と。

 

「夢は綺麗に叶わない」

「何事もうまくいきっぱなしということはない」

「計画を立て、準備をしても、それでうまくいく保証はどこにもない…」

と。

 

根底にあるメッセージとしては、

何度も言うように「ネガティブ」ですが、

 

こひつじに自分自身を重ねると、

「慎重に生きていきたいもんだなぁ…」

と思いますね。

 

 

 

甘いお話だけでなく、こんな寂しい結末を迎えるお話もあるということ自体が、

昔話の魅力です。

 

きれいなテンポで、リズムよく、

心の奥に”何か”を届ける…

 

作者と読者(語り手と聞き手)の心の奥底での、

言葉を超えたコミュニケーション…

 

これこそ『ストーリーの力』です。

 

Hirayama
このように、

結末をどう捉えていいかわからない、

きれいにまとまった感想が抱けない、ストーリーもあります。

でもこのストーリーは、人々の心に”何か”を置いていくような気がします。

そんなインドの昔話『小さなこひつじ』をご紹介しました。

【名作昔話を掘り下げる10】『小さなおうち』

2017.11.07

【名作昔話を掘り下げる12】『ねこの大王』

2017.11.08

Sponsored Link



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です