【名作昔話を掘り下げる10】『小さなおうち』

名作昔話を掘り下げる、第10回目は、

ロシアの昔話

『小さなおうち』

をお送りします。

 

これはですね、

非常にシンプルで、

 

私的には、まるで絵画のように

”美しい”作品だと思っています。

 

が、

昔話として「楽しむ」には、

少々、敷居が高いかも知れませんね…。

(「何が面白いの?」と。)

 

ですから、

ちょっと私が、

解説してみます。

Hirayama
このストーリー分析は、

物語創作に興味のある人や、

今、心のモヤモヤを抱えている人に、大きな示唆を与えるものとなっています。

それではスタート!

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今回ご紹介する話は…

↑この中に収録されています。



↑私による朗読です。(記事をお読みいただいた後に聴くほうがいいかも知れません。)

このストーリーのモチーフ(発想の原点)

”モチーフ”とは、もともと音楽用語で「最小旋律」を意味します。物語創作に置き換えると「こんな物語を作りたいなぁ」という”イメージ像”あるいは”きっかけ”のようなものです。
出ました。

前回と同じく、またしても、

モチーフ、なしです。

 

ですが、

前回と違って、まったくナシではなくて、

あえて言うならば…、

こういうことでしょうか?

昔話って、基本、語って聞かせるものだから、

それぞれが自由に想像してくれるもの。

想像の世界は、もう何でもアリ。

じゃあ、いっそ、現実的にはありえないことを想像させちゃおっかな…?

モチーフがこれですから、さすがに、テーマはないですね…。

 

物語の『天・地・人』

続いて、基本設定を抑えていきましょう。

天(時代・世界設定)

ロシアの昔(当然「昔話」なので、ファンタジー要素が非常に強い世界観です。)

地(物語のスタート地点)

ある広場の真ん中

人(主人公および登場人物)

こねずみ(ねずみどん)、かえる(かえるどん)、うさぎ((うさぎどん)、きつね(きつねどん)、くま(くまどん)

登場キャラクターは全部で5人。

 

昔話が好む要素「3」に注目すると、

こねずみ、かえる、うさぎまでは小動物ですが、(ここまで3匹

きつねから大きくなります。

 

その次には、何と、もっともっと大きいクマです。

…何とも意味ありげです。

 

あらすじ(物語のおおまかな設計図)

ビンがひとつ、野原の真ん中に落ちていた。

そこにこねずみが入って、そのあと、

かえるが入って、そのあと、

うさぎが入って、そのあと、

きつねが入って、そのあと、

クマが、入るのかと思ったら…

ビンをつぶしてしまいました…。

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起承転結は?

馬車からビンが落ちて。野原の真ん中に。

「すてきなおうちだ」と言って、そこにこねずみが入る。

承①

そこにかえるもやってきて、入る。

承②

そこにうさぎもやってきて、入る。

承③

そこに、キツネもやってきて、入る。

そこへ、くまがやってくる。

くまはビンに入ろうともせず、上から座り込んでぺしゃんこに潰してしまう…。
一般的な「起承転結」は、さらに細かく分けると「起」→「承①」→「承②」→「承③」→「転」→「結」となります。これは昔話以外のどんな長い物語にも当てはまります。主人公の「アクション(行動)」および「それによって動いた事実」に焦点を絞って振り分けます。

「承」に関しては、きれいな「3」のリズムがキマっていますね。

 

それも、

承③で、ビンに入るはずのないきつねが入ることによって、

雲行きが怪しくなってくるあたり、

承①〜③の流れが、非常に綺麗です。

このストーリーのポイントは?

このお話は、絶対に、で聞いたほうが面白いです。

絵に描いたら、矛盾だらけになってしまいます。

 

「こねずみ、かえる、うさぎ、それにきつねまで

ビンの中に入っちゃった…。ほんとかよ?」

 

と思いながらも、何とか想像しながら、聞いていくと、

 

「くま?! そりゃいくら何でも無理だろ…」

 

というところで、

くまがビンを踏みつけてしまって、あっけなく終わります。

 

まるで想像すら無理なところに、

語り手側から、助け舟が入るような感じですね。

 

積み上げたものを、一気にガッシャーン!と壊してしまうような、

そんな「爽快さ」が、

このお話の魅力だと思います。

 

この世界観と、この軽快なリズムとテンポ、

まさに昔話ならではという感じですね。

まぎれもなく「名作」です。

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このストーリーの伝えるメッセージは?

 

このコーナーでは、私が特に好きな昔話だけを、チョイスして紹介していますが、

「昔話ならではの爽快感のある話」としては、

これが一番じゃないでしょうか。

 

語り手と聞き手の”心のコミュニケーション”ができる点が、

何より素晴らしいです。

このお話は、言ってみれば、少し乱暴な結末ですが、

それがそのまま、語り手と聞き手の間に、

ユニークな関係性を運んでくる効果があると思うのです。

…まるで語り手が聞き手に対して、

ちょっとしたイタズラを仕掛けたかのような。

 

途中、うさぎまでは、おだやかにテンポよく進み、

めでたしめでたし…

 

そのあと、若干受け入れにくい、きつねまで何とか入り、

ほっと安心…

 

そこへ、「おいおいそれは無理だろ」というくままでやってくるけど、

全部を破壊してしまう…

 

でも悲しい終わりでなく、

あくまでも、あっけらかんと終わる…

 

短いながらも感情のいろんなところをくすぐってくる、

本当にいいお話です。

 

あと、細かい箇所で言うと、

冒頭で「馬車からビンが落ちる」ところもいいですね。

 

このお話の中で、

「馬車」は人間社会

そして「びん」は人間の文明の象徴でもあります。

動物たちの世界とは、異なる世界のものです。

 

冒頭、馬車からビンが落ちることによって、

日常生活から離れ、お話の世界にグッと入っていくことができます。


 

Hirayama
まるで短編映画のような、絵画的な美しさがあって、

すぐに終わる一日旅行のような、素晴らしい体験ができるお話、

そんなロシアの昔話『小さなおうち』をご紹介しました。

【名作昔話を掘り下げる9】『この世のおわり』

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【名作昔話を掘り下げる11】『ちびのこひつじ』

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