名作昔話『旅人馬』に見る、人生の目的の見つけ方

名作昔話を掘り下げる、第2回目は、

『旅人馬(たびびとうま)

をお送りします。

これも面白い話なんです。

もう、人生が丸ごと濃縮されているような話です。

Hirayama
この独特、かつシンプルなストーリー分析は、

物語創作に興味のある人にとって役立つほか、

今、心のモヤモヤを抱えている人に、大きな示唆を与えるものです。

それではスタート!

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今回ご紹介する話は…

↑この中に収録されています。



↑私による朗読です。(記事をお読みいただいた後に聴くほうがいいかも知れません。)

このストーリーのモチーフ(発想の原点)


主人公はパートナーと一緒に旅に出ます。

ところが、そのパートナーが不思議な”事故”に遭ってしまい、

そこから、動けなくなってしまいます。

主人公はパートナーを救うために、世の中を駆けずり回り、

ようやく救う手立てを見つけ出すと、

ついにパートナーを救い出したのでした。

”モチーフ”とは、もともと音楽用語で「最小旋律」を意味します。物語創作に置き換えると「こんな物語を作りたいなぁ」という”イメージ像”あるいは”きっかけ”のようなものです。

天・地・人

「日本のむかし」・「宿屋」・「貧乏人の子」

「天」=時代や世界観設定、「地」=場所、「人」=主人公のこと。これら「天・地・人」が揃って初めて、物語はスタート地点に立ちます。

あらすじ(物語のおおまかな設計図)


金持ちの家の子と、貧乏人の子が、遠いところへ2人で旅に出ます。

宿での夜、

貧乏人の子が囲炉裏のある部屋を覗くと、

宿の女将が不思議な術で、モチを作り出しました。

翌朝、そのモチを食べた金持ちの子は、

馬になってしまい、その宿でこき使われることに…。

逃げ出した貧乏人の子は、

友情と執念に突き動かされ、

とうとう友達を救う方法を見つけ出します。

救い出した後、金持ちの家の財産は二分され、

2人とも金持ちになって、その後も仲良く暮らしました。
あらすじとは「いつ、どんな状況にあった誰が、何をして、最後どうなったか?」です。創作する場合には「モチーフ」+「天・地・人」の要素、さらにそこに、主人公の「移動」の様子をイメージするとまとめやすいでしょう。

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起承転結は?

旅に出た金持ちの子と貧乏人の子が、宿に泊まります。

金持ちの子は、そこで不思議な術で馬にされてしまい、旅から脱落…。

友達を救うためにあちこち歩き回る主人公(貧乏人の子)。

そこへ不思議な雰囲気のおじいさんが現れ、

友達を救う方法を教えてくれます。

主人公のチャレンジ開始。

ついに術を解くための”茄子”を手に入れ、

友達(金持ちの子)を救い出す主人公。

2人とも金持ちになって、仲良く暮らしました。
「起承転結」は、さらに細かく分けると「起」→「承①」→「承②」→「承③」→「転」→「結」となります。これはどんな長い物語にも当てはまります。

このストーリーのポイントは?

まず、登場するのは、

2人の男の子。

それぞれ特徴があって、

1人はお金持ち。もう1人は貧乏人。

「アンバランス」ですね。

 

人は、アンバランス状態が、バランスのとれた状態になることを、

無意識のうちに求めます。

 

最初の時点で、

読者(聞き手)は、自然と貧乏人の子に”肩入れ”します。

(…そういうものです。)

 

案の定、不幸は、金持ちの子に起こり、

貧乏人の子は、1人になります。

 

この物語は、

2人が旅に出るシーンが、起承転結でいう「起」になりそうですが、

違います。

 

宿のおかみさんの美しくも奇妙な儀式があり、

それを経て、

金持ちの子が旅から脱落するところが、

物語のスタートです。

(現に、2人の本来の出発地点や、旅の目的もぼやかしています。)

 

この物語の面白いところは、

主人公のアクションの一つ一つが、つっかかり、つっかかりしつつも、

スムーズに進んでいくところでしょう。

 

どういうことかと言うと、

友達を起こして知らせねばと思うのに…」

●眠くなって泥のように眠り込んでしまう。
「そのモチ食うなよと小さな声で教えるのに…」

●それが聞こえないのか、友達はモチを食べてしまう。
「どんなに探しても7つ身のついた茄子は見つからない…」

●ナス畑を探し回り、3日目にようやく見つける。
「馬になっている友達は、4つまでは茄子を食べるが、あとは首を振って食べきらんというも…」

●無理やり口に押し込んで食べさせる。

どうですか?

この、正解が目の前にあるのに、

思い通りにいかない感じ。

 

でも、

都合よくラッキーを掴み、

運命を切り拓くシーンもあります。

「貧乏人の子は夜眠れんという言葉のある通り…」

●1人だけ起きて囲炉裏の部屋を覗く。
「男の子はすがりつきたい気持ちになって、じいさまにたずねるたと…」

●じいさまは「よしよし教えてやろう」と答えてくれる。

どうです?

この「運命」に導かれている感じ…。

 

人生そのものじゃないですか?

 

物語つくりのテクニックとしても、非常に勉強になりますね。

決して、すんなりとは、次のシーンに進まないんですよ。

 

先のイメージ(バランスのとれた状態)を抱かせ、

「最後はおそらく友達を救うんだろうなぁ」

という予想をさせつつ、

ヤキモキさせつつ…、

 

読者(聞き手)の集中力を途切れさせず、つないでいくんですね。

 

…うん、よくできてる。

 

おっとっと、

あと、ここにも触れておかなきゃいけません。

 

宿のおかみさんの、深夜の不思議な儀式について。

 

創作者観点で見ると、

ここでは

物語を先に進めるために「金持ちの子を変身させる何か」

が生まれれば何でもよかったのですね。

 

それを

「モチ」

に定め、

…そうすると、モチの原料は、です。

 

不思議な人形は、

囲炉裏の中で、モチを、

米から、しかも田植えから始めて作ります。

 

この時の儀式の様子・雰囲気が

この物語の”色”を見事につくりあげています。

 

2人の出発地点を物語の「起」とせずに、

片方の脱落を「起」とする…

しかも、

こんな妙なところで趣向を凝らし、

物語の”色”を作ってしまう…

 

何とも高等テクニックじゃないですか。

(私のような昔話好きには、本当に)シビれます…

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このストーリーの伝えるメッセージは?

「人生はストーリーである」と、

以前このブログで書かせていただきましたが、

人はみな「自分の人生という物語」では主人公

2016.09.08

この物語などは、まさに人生を表しています。

 

人には「向上心」があります。

それは、「希望」と言い換えてもいいでしょう。

 

この物語では2人の男の子が出てきますが、

私は

「金持ちの子」と「貧乏な子」とは、

1人の人間に内在する2つの要素を指しているように思います。

 

「貧乏な子」は、

「金持ち」である自分も内在していたのです、最初から。

 

自分の”半分”が明らかに欠損した時、(金持ちの友達が脱落した時、)

主人公の本当の旅が始まります。

 

これは、この時点で、

「生きる目的が明確化した」ということ。

 

あるいは、「自我の芽生え」とも言えるかもしれません。

 

人は何かを手に入れようとして努力しますが、

それは「自分と縁のないものを手にいれる」というものではないんですね。

 

そうではなく、

 

元から持っていたものを取り戻す

あるいは、

より自分らしくなるために、その「何か」を手に入れようとする…

 

のだと思います。

 

あなたがそれを「やりたい」のは、

多分、あなたがもっとあなたらしくなるから。

 

あなたがそれを「欲しい」のは、

多分、あなたがそれを持つと、もっとあなたらしくなるから。

 

だから、あなたはそれに向かって努力をしているのです。

 

 

私、この物語は、

人が、失われた半身を求めて旅をする話

だと思うのです。

 

だから、宿のおかみさんに「悪意」がないように描かれていると思うのですね。

(しかも、”儀式”は、どこか美しい…。)

人の悪意によって、半身が奪われるわけではない、

それもまた、いいじゃないですか。

 

旅は、

いえ、人生は、

けっして思い通りにはいかないけれど、

 

きっと、いい結末へ、

ちゃんと「導かれて」いきます…。

 

それを信じられる気がしますね、この物語に触れると。

Hirayama

…というわけで、

名作昔話を掘り下げる、第2回目『旅人馬』でした。

何らかのお役に立てば幸いです。


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