名作昔話『若がえりの水』から学ぶ、起承転結の「転」のあり方と「愛の形」

名作昔話を掘り下げる、第5回目は、

『若がえりの水』

をお送りします。

 

これは有名な話なので、

ご存知の方が多いと思いますが、

あえて私流に解説させていただきます。

…単純ですが、深い話なんですよ、コレ。

Hirayama
この独特、かつシンプルなストーリー分析は、

物語創作に興味のある人にとって役立つほか、

今、心のモヤモヤを抱えている人に、大きな示唆を与えるものです。

それではスタート!

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今回ご紹介する話は…

↑この中に収録されています。



↑私による朗読です。(記事をお読みいただいた後に聴くほうがいいかも知れません。)

このストーリーのモチーフ(発想の原点)

若返りたい、何とかして若返る方法はないものか…?

そうだ、山の中に、不思議な泉があって、

それを飲んだら若返るってのはどう?
”モチーフ”とは、もともと音楽用語で「最小旋律」を意味します。物語創作に置き換えると「こんな物語を作りたいなぁ」という”イメージ像”あるいは”きっかけ”のようなものです。

現代の創作物なら、

若返った後に起こるスッタモンダを

物語の核にしそうですが、

これは昔話

ある意味、

ストーリー展開に”欲”がないと言いますか、

このモチーフだけで最後まで突っ走ります。

天・地・人

「日本のむかし」・「自然に抱かれた土地」・「じいさまとばあさま」

「天」=時代や世界観設定、「地」=場所、「人」=主人公のこと。これら「天・地・人」が揃って初めて、物語はスタート地点に立ちます。

物語設計に大事な3要素と言いながら、

このストーリー講座では昔話を中心にやっていますので、

「天:日本のむかし」

ばかりで恐縮です…。

 

「むかーし、むかし…」で始まる

昔話の世界観とは、つまり、

何でもアリの世界(ファンタジーの世界)

それに、

登場人物の”気持ち”にはあまりクローズアップせずに、

”出来事”だけを語っていきますよ、

という枠組みそのものを指しています。

あらすじ(物語のおおまかな設計図)

山へ出かけたおじいさんが、たまたま見つけた泉の水を飲むと、若返った。

家に帰っておばあさんにそれを教えると、

おばあさんは、1人で泉に出かける。

なかなか帰ってこないおばあさんを心配して、

おじいさんが泉へ行くと、

そこには、赤ちゃんにまで若返ったおばあさんがいた…。

あらすじとは「いつ、どんな状況にあった誰が、何をして、最後どうなったか?」です。創作する場合には「モチーフ」+「天・地・人」の要素、さらにそこに、主人公の「移動」の様子をイメージするとまとめやすいでしょう。

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起承転結は?

芝刈り中に、たまらなく喉が渇いたおじいさん。

水を探して、山を歩き回ります。

承①

泉を見つけるおじいさん。

その水を飲んだおじいさんは、若返ります。

承②

おじいさんが家に帰っても、

おばあさんは、それがすぐにおじいさんだとは分かりません。

状況を飲み込んだおばあさんは興奮し、

「今すぐに行く!」ときかない。

承③

次の日の朝、おばあさんは、おじいさんが起きる前に

急いで泉へ出かけます。

勢いよく泉の水を飲むおばあさん。

おばあさんは、なかなか家に帰ってきません。

心配になったおじいさんは、泉へ出かけます。

おじいさんが泉に着くと、

そこには、おばあさんの衣服に包まれた、

赤ちゃんがいました…。

猿は喜びます。
「起承転結」は、さらに細かく分けると「起」→「承①」→「承②」→「承③」→「転」→「結」となります。これはどんな長い物語にも当てはまります。

このストーリーのポイントは?

今回は、「起承転結」の中で

きっちりと、「承」を3つに分けてみました。

これは単純に、

「アクション」ごとにきっちり区切っただけです。

●(起)おじいさん、泉を探す。
⬇︎
◉(承①)おじいさん、水を飲む。若返る。
⬇︎
◉(承②)おじいさん、おばあさんに教える。おばあさん、興奮。
⬇︎
◉(承③)おばあさん、ゴクゴク一気飲み。
⬇︎
●(転)おじいさんは、帰ってこないおばあさんを心配し、泉へ出かける。
⬇︎
●(結)おじいさんは、赤ちゃんになったおばあさんを見つける。
(↑途中、主人公がおばあさんに入れ替わっているのもポイント。)

 

「これから物語を創作してみたいなぁ」

と考えている方の中には、

 

「物語には、起承転結があるから、

起承転結から考えなくてはならない…」

 

と思い込んでいる人も多いかも知れません。

 

ですが、

初めの段階では、起承転結をきっちり考える必要はありません。

大事なのは、

ストーリーの結末のイメージだけをしっかり持っておく

ということです。

 

承を3つに分けて考えると良いというのは、

ここでテンポを演出しつつ、

伏線をきっちり貼っておくわけです。

 

この物語の結末に向けての伏線は、

おばあさんの興奮ぶりです。

 

●若返ったおじいさんを見てもすぐには気付かないこと
(それくらいのインパクトがあったということ)

●「今すぐ行く!」と言って、子供のように騒ぐこと

●おじいさんが起きる前に出かけること

…これらが、ちゃんと、

「おばあさんが泉の水を飲みすぎること」

の伏線になっているわけですね。

 

結末をちゃんとイメージしておけば、

「転」の部分は自然に決まってきます。

 

物語創作において重要なのは、

なぜその「転」があり、その結末に至ったのか?

「動機・伏線」をしっかり描いておく

ことです。

 

この『若がえりの水』の水は、

シンプルな話でありながら、そこがしっかり描かれている点において、

とてもいい教材になります。

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このストーリーの伝えるメッセージは?

 

若さや美しさは、

人間にとって、永遠の願いです。

 

特に女性は、これに対する執着心が強いと思います。

(この物語で描かれている通りです。)

 

ですが、

この昔話は、それだけを伝えているわけではありません。

 

この物語で、とても印象的なのは、どこまでも冷静なおじいさんです。

 

先に若返ったことを、おばあさんに自慢するでもなく、

さらに最後、

赤ちゃんになったおばあさんを抱えて、

”子守唄”

を歌いながら家に帰って行く姿…。

 

おばあさんに対して「バカだなぁ」と思い、それで終わりの話じゃないんですね、

この話。

 

私は個人的には、

”愛の形”

について、考えさせられます。

 

愛情って、

 

たとえば、

趣味が合って、

同じくらい活動的で、

この人と喋ると会話が弾んで楽しいから…みたいな理由で、

沸き起こる気持ちじゃないと思うんですね。

 

幼い生き物や、植物を育てるように、

”見守る愛情”

もありますし、

 

たとえば、

愛している相手が、

四肢不自由になってしまうことだってあります。

 

この『若返りの水』という物語の本質は、

ただ不思議な泉があって、バカなおばあさんがいました…

では、ないんですね。

 

注目すべきは、

 

この話が古来から伝承してきた中で、

このおじいさんの優しさがずっと描かれてきたこと、

それが、ずっとこの話の中に残されてきたこと、

…ここに、

私は、希望を感じるんですね。

 

「人間も(日本人)も、捨てたもんじゃないな…」

 

って、すごく思います。

 

 

物語って、楽しいです。

Hirayama

…というわけで、

名作昔話を掘り下げる、第5回目『若がえりの水』でした。

何らかのお役に立てば幸いです。


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